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12月1日~殺スナカレ 殺サセルナカレ

 いよいよ今年も師走に入りましたが、師走はお坊さんが走る、忙しいという意味ではなく、「年果つ」が変化したという説が有力だそうです。

 さて、瀬戸内寂聴さんが先月九日に九十九歳で往生の素懐を遂げられました。

 作家で僧侶の寂聴さんは、波瀾万丈な人生の経験を通して多くの人々をその言葉で魅了し、また支え励ました方ですが、反戦平和を世の中に強く訴えた方でもありました。

 私が若かりし時、ご指導を頂いた管義仙先生が、ご著書の中で紹介されていますので一部を紹介します。

 「寂聴さんは文学者であると同時に天台宗の僧侶。仏教の戒律『殺スナカレ 殺サセルナカレ』を前面にかかげ、作家としても戦争反対の立場を貫いておられるのです。

 寂聴さんは九一年の湾岸戦争の時には戦争中止を呼びかけて八日間の断食を、アフガン攻撃の時も三日間抗議の断食をされました。八十歳の健康を周囲が心配して、抗議の断食の代わりに新聞の意見広告となったこともあります。

 戦争について、寂聴さんは以前にこう書かれています。『地球すべての国が焼け野原になり、万一、そこに自分ひとり命をたすけられ、生きのびたとしたら、人は幸福だろうか。助かった喜びを語り合い、喜び合える相手がいてこそしあわせなので、たったひとり残されて、孤独のなかで生きることはできない。女たちが戦さに反対して世界の牢獄にみつる時こそ、瀕死の地球がよみがえる奇跡のおこる時があらわれるのではないかと空想する』と。

 日本中、プロの宗教家を自称する人は十五万人を超えますが、反戦を訴え続けている人はごくごくわずかです」。

 『殺スナカレ 殺サセルナカレ』

 反戦を訴え続けた寂聴さんの姿勢に、学ばせていただきましょう。

12月1日~殺スナカレ 殺サセルナカレ2021年12月01日【393】

11月16日~そのカゴを水につけよ!

 初冬の穏やかな日差しを小春日和と言いますが、寒さの中の小さな春です。

 さて先日、本堂で法事をお勤めし、ご法話が終わった直後のことです。お参りに来られていた高齢の女性が私に質問されました。

 「私はご覧の通り高齢で、手も震えてメモを取ることができません。ですから、今お坊さんが話してくださった有り難いお話をしっかりと聞いて帰ろうと思うのですが、いつも、右の耳から左の耳へ通り抜けて、時間が少し経つと何も頭の中には残りません。どうしたらいいでしょうか」

 私の拙い話を有り難いと思い、そして聞きとどめたいと思ってくださるとは、これはまことに有り難いことです。

 その女性の質問に対して、私は蓮如上人のお言葉を紹介しました。

 「おばあちゃん、それはこの私も一緒ですよ。私もご法話を拝聴したしばらくの間は覚えているのですが、時間が経てば忘れてしまいます。でも、そんな私たちに蓮如様は、『そのカゴを水につけよ』とおっしゃいます。

 竹で編んだカゴに上から水をかけると、水はカゴの隙間を抜けて全部下にこぼれてしまいます。つまりこのカゴが私たちということです。仏様のお話を聞いて、有り難いな、よかったな、ちゃんと覚えておかなければと思っても、水がカゴをさっと通り抜けるように、時が経てばすぐにお話を忘れてしまう。

 蓮如様は、ならばいっそのこと、カゴを水につけておけば忘れることなく、仏さまのみ教えにずっと浸っていることができますよということです。つまり仏様のお話を聴聞する機会を重ねることの大切さをおっしゃっているのです」

 「そのカゴを水につけよ」

 日本全国、報恩講の季節です。そうぞ、近くのお寺に足を運びお聴聞を重ねて、仏さまのみ教えに心身を浸しましょう。

11月16日~そのカゴを水につけよ!2021年11月18日【392】

11月1日~一切のもは原因があり縁がはたらいて…

 秋も深まり、テレビでは照紅葉の美しい風景が放映されています。

 さて、仏教は因縁生起の教えといわれます。インとは原因の因、ネンとはご縁の縁、ショウとは生まれる、キとは物事が起こるという字を書きます。

 つまりこの世の一切のものは、原因があり、そこに縁がはたらいて、生まれて、起こり、すべてのものは複雑に関係し合って存在しているということです。

 先日、お寺の庭に植えてあるインド菩提樹の枝を切って挿し木にしました。

 このインド菩提樹は、十数年前インドのお釈迦様の仏跡を参拝した折に、苗木をもらってきて庭に植えたものです。

 それから毎年春先に芽を出して、夏に大きく成長し、秋には高さ一メートルくらいにまでなるのですが、冬を前に必ず枯れてしまいます。

 盆地で寒さの厳しい大隅の環境に合わないのでしょう。菩提樹の芽が出る原因はあっても、それが育つご縁、つまり条件が整わないので、大きな幹になるまで成長しないのです。

 しかし、菩提樹は完全に枯れてしまったわけではありません。毎年必ず芽を出すわけですから、土の中で生きているわけで、これも枯れて死ぬご縁、つまり条件が整わないので、生命を保っているわけです。

 今回、その枝を切って挿し木にしたのですが、これもご縁、条件が整わないと、うまく根が出て成長はしないでしょう。

 よく縁起がいいとか悪いとかいうことがありますが、実は、この因縁生起を略した言い方が縁起ということで、本来はいいとか悪いとかではなく、この世の一切のものは、原因があり、そこに縁がはたらいて、生まれて、起こり、すべてのものは複雑に関係し合って存在しているというお釈迦さまが説かれた真理のことであります。

 さて、菩提樹の挿し木は上手に育つでしょうか。お水や日当たり、肥料など、菩提樹にとって、よい条件が整うように努力をしましょう。

11月1日~一切のもは原因があり縁がはたらいて…2021年10月31日【391】

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