5月1日~「大きな物語」と「小さな物語」
風薫る季節となりました。
さて、お寺では毎朝、仏前でお経をお勤めをして、そこに説かれている教えを学ぶのですが、仏さまのことも、お浄土のことも、ご修行のことも、そこに説かれる内容がとてつもなく広く長い、いわば非常識な内容だと、つくづく思うことがあります。
そのことについて、現在「NHKこころの時代・歎異抄にであう」の番組で、宗教学者の阿満利麿先生が、わかりやすくお話しくださっています。
阿満先生は、その私たち人間の常識を越えた仏さまのみ教えを「大きな物語」とたとえておっしゃいます。
一方で、私たちの一人ひとりの日常は、「小さな物語」を繋ぎながら生きていると…。子どもの成長や、家を建てたり、旅行をしたり、あるいは親の介護をしたり、自分の老後を考えたり、それぞれの人生設計を立て、いわば一つ一つの小さな物語を繋ぎながら人生を送っていきます。
しかし、人生にはまさかという、思わぬ出来事がだれにでも起こります。突然の病や事故など、自分自身にも、家族にも、いつ、どこで、どんなことがあるかわからないのが人生です。
「なぜ私に、なぜ私の家族に、このようなことが起こるのか」「なぜ、このような悩みを背負わなければならないのか」。常識では解決のできないような苦しみや不条理を経験することがあります。
阿満先生は、仏さまの「大きな物語」とは、そのような人間と人生に、究極的な意味を与えるものであるとおっしゃいます。そして、常識では解くことができない人間の直面する人生の問題に、「大きな物語」は常識では考えられないような時間軸を使って、あるいは常識を越えた智慧をもって、人間の抱える問題を解決へと導いてくださるとおっしゃいます。
なお番組は、9月までの第三日曜日朝五時から、再放送は同じ週の土曜日午後一時から、NHKのEテレで放送されます。ぜひご覧ください。
2022年05月01日【403】