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10月16日~立派な人になるには…。
台風二十六号は伊豆大島を中心に、大きな被害をもたらしました。被害に遭われた方々に心からお見舞い申し上げます。
さて、今月一日、JR横浜線で大変残念な列車事故が起きました。
踏切内で倒れた高齢の男性を助けようとして、村田奈津恵さんが四十歳の若さで亡くなられました。
報道によると、お父様の運転する車の助手席に座っていた村田さんは、踏切内の男性を見て「助けなきゃ」と話し、「ダメだ、やめろ」と制するお父様を振り切って踏切内に入り男性を動かして助け、ご自身は電車にはねられてしまいました。
村田さんの自らの命を顧みず救出に当たった行為に感謝し、心から哀悼の意を表します。
一連の報道の中で、村田さんの小学生の頃の作文が紹介されていましたが、村田さんはその中で、「立派な人になるにはどうしたらよいのか」と自問思案し、それには、「努力し続けること」と自ら答えを見出していました。
小学生にしてその高遠な内容に驚かされました。そして村田さんのこの度の行動は、この幼い頃からの尊き思いと生き方が、とっさに現れたのではと感じました。
尊い人命が失われたこの度の事故を、美談として終わらすことは慎むべきでしょう。
また一方で警報器、遮断機があっても踏切内に簡単に入れる現状や緊急時の非常ボタンの活用の奨励等、システム的な改善も忘れてはならないことです。
しかし常日頃から、自己の行いを正しく厳しく律しながら、周囲の方々を思い、身も心も捧げ尽くして来られた村田さんの生き方に少しでも学ばせていただきたいと思います。
立派な人には簡単になれるものではありませんが、日々努力し続けること。村田さんの遺徳を偲びつつ心から感謝いたします。
10月16日~立派な人になるには…。 | 2013年10月17日【202】
10月1日~まさしく「今でしょ!」
一年を七十二の季節で区切ると、今は「蟄虫培戸・むし かくれて とを ふさぐ」。早くも虫たちは冬ごもりの準備に入ります。
さて、私たちの日常生活の中で、大切なことは早めに行っておいたほうがよいことを促す言葉に、「早し良し ちょうど良し危うし 遅し悪し」というものがあります。
「大切なことは早めにやっておくことが一番良い。締め切りに合わせて行うことは危ういことがあるかもしれません。遅れて間に合わないことは取り返しが付きませんよ」ということです。
「法事は命日より遅らせてはいけないが、早めに行うのはよい」という人がいますが、これは人間の都合によって大切な命日の法事を遅らせては、粗末になって申しわけないという戒めでありましょう。
この言葉は、私たちの仏法聴聞についても同様のことが言えます。
先般、お寺にいらした女性が、せっかくお彼岸でお寺の法要にまいろうと出かけたら近所の人から、『また極楽行きの道作りですか』といかにも暇人のように言われました。残念ですね」と、おっしゃいました。
お寺では、死にまつわる話をするから元気なうちはまだ聞かなくてもいい。お寺は、勤めも終わって時間ができた年寄りが行くところだと、おっしゃる方もおられますが、お寺でのご法話は、死にまつわる話よりも、私の人生で死ぬまでになすべきことは何か。真に心豊かな人生を送るにはどのような生き方が大切かということが主題です。
仏さまは私たちの生命は、予測困難だと諭されます。それを無常といいます。
ですから私の人生の問題、私がこの世に生命を恵まれた意味、そして人生の本当の目標を聞くのは今しかありません。
まさしく「今でしょ」。
お寺での仏法聴聞は早し良しです。ちょうど良しは危ういかもしれません。遅しは…言わずもがなです。
10月1日~まさしく「今でしょ!」 | 2013年10月01日【201】
9月16日~全国の皆さん、お仏壇を…。
秋の彼岸が近づき、時折吹く風に秋の気配を感じます。
さて、九月八日の早朝、日本全国に歓喜の声が響き渡りました。
アルゼンチン・ブエノスアイリスで行われたIOCの総会で、「二〇二〇年夏季オリンピック・パラリンピック」の開催地が、東京に決定したからです。
一九六四年以来、五十六年ぶりの夏季大会。私も、決定の喜びを抱き合いながら喜ぶ招致団のメンバーをテレビで見ながら、とても感動することでした。
また、それに引き続き放送された特別番組の中で、もう一つ感動したことがありました。
それは、過去のオリンピックを思い起こす場面で、四十九年前に開催された東京オリンピックの開会式スタート、緊迫の場面が放送されたときです。
テレビの放送席にゲストとして招かれた、当時人気俳優だった森繁久弥さんは、マイクに向かって「全国の皆さん、お仏壇をあけてください。この盛大な模様をご先祖様に報告しようではありませんか」と、語りかけたのです。名文句として残されています。
戦後十九年、苦しい時代を経て迎えたオリンピックは日本の復興の象徴でした。
苦労多き日々だったけれど、その栄えある行事を迎えられたのは自分たちだけの力ではない。
お浄土におられる戦争で亡くなられた親兄弟をはじめ、ご先祖方のお陰があってこそ。
ならばこの輝かしい様子をご先祖方にもぜひ見ていただきたい。森繁さんはその気持ちをこのように表現されたのです。
そして、森繁さんが「全国の皆さん」と呼びかけたということは、その当時の多くの家庭では、中心がお仏壇であり、仏さまであったということでしょう。
七年後、再びその栄えある模様を迎えることができたならば、その喜びを、自分ならば何と表現しましょうか。
また、あなたの家の中心は何でしょうか。もし仏さまではなく人間さまであるならば、少し残念な思いがします。
招致決定の喜びとともに、一考させられる朝でした。
9月16日~全国の皆さん、お仏壇を…。 | 2013年09月17日【200】