11月16日~自分以外は皆先生
十一月も半ば、急に寒さが増してきました。
さて、国民的代表作家といわれ、親鸞さまの小説も書かれた吉川英治さんは、「自分以外皆わが師なり」とよくおっしゃったそうです。
既に故人となりましたが、私が昔、ご縁をいただいていた先輩僧侶も、「出合う人、皆先生」とおっしゃっていました。
いずれの言葉も、「生涯で出合う人、自分の周囲のすべては、自分を育ててくれる先生である」ということですが、普段の生活の中で、いつも周囲の人や事柄に対してそのような思いでいられるかというと、なかなか難しいものです。
私たちは日々、仕事場や地域、あるいは学校で、様々な人や事柄と出会いながら生活をするわけですが、時には、自分のことを低く評価する相手もいますし、悪口を言う人もいます。また、なかなか意見が合わない人もいますし、自分の意に沿わない状況が起こることもしばしばです。
そういう人や事柄、あるいは出来事に対して、「あなたは私の先生だ」と思うことはなかなかできることではありません。
しかし、この二つの言葉を深く味わうとき、自分中心の世界ではない、広い心や視野を持つことの大切さ、そのことを常に実感できる教えを持つことが大切なように思います。
顧みれば、人はこの世に生まれて、親から育てられ、多くの人や自然、動物や植物、それぞれの環境から影響を受けて、心も体も育てられていきます。
自分の考えだと思っていることも、実はすべてこれらすべての影響の集大成であると言っても過言ではないでしょう。
もしも今、少々の逆境を超えることができる自分があるとするならば、それは過去に流した涙や汗の結果かも知れません。
人はありとあらゆる縁起の中で、生かされ育てられているという思いにたてたとき、はじめて「自分以外皆わが師なり」、「出合う人、皆先生」という境地になるのでありましょう。
2013年11月17日【204】