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9月1日~あなたはあなたのままで…

 九月一日は関東大震災があった日で防災の日。強い台風にも用心しましょう。

 さて、八月二十四日、鹿児島市出身で京セラの名誉会長の稲盛和夫さんが九十歳でお亡くなりになりました。

 稲森さんを偲んで、以前、このテレホン法話で紹介した稲森さんの幼い頃の思い出話をあらためて紹介します。

 稲森さんは、鹿児島の浄土真宗にご縁のある家庭で育たれました。稲森さんの幼い頃はあの隠れ念仏の習わしが残っており、日没後の暗い山道を、提灯の明かりを頼りに、お父様の後を必死でついて行った思い出があるそうです。

 登った先には一軒の家があり、押し入れの中に立派な仏壇が置かれていて、その前でお坊さんがお経を唱えており、その後ろに正座をさせられたそうです。

 読経が終わると、一人ずつ仏さまにお線香を上げて拝むように教えられ、その時、お坊さんは稲森さんに、「これから毎日、『なんまん、なんまん、ありがとう』と言って、仏さんに感謝しなさい。生きている間、それだけすればよろしい」と言われたそうです。

 稲森さんは、「それは私にとって、最初の宗教体験とも言える印象深い経験でしたが、その時に教えられた感謝することの大切さは、私の心の原型を作ったように思います。そして実際、いまでもことあるごとに、『なんまん、なんまん、ありがとう』という感謝のフレーズが無意識のうちに口をついて出たり、耳の奥によみがえってくるのです」とおっしゃっています。

 「なんまん」とは「南無阿弥陀仏」のことで、「いつでも、どこでも、どのような時でも、あなたをそのまま救い取る。だからあなたはあなたのままで精いっぱい人生を生きぬきなさい」との阿弥陀如来の呼び声です。

 稲森さんは、その呼び声のままに、常に前向きに努力を重ねられ、多くの方々のために、稲森さんらしく精いっぱい生きぬかれました。

 ご往生に際し心から、「なんまん なんまん ありがとう」とお念仏を申します。

9月1日~あなたはあなたのままで…2022年08月31日【411】

8月16日~早くお迎えに来て!

 空の上では雷がゴロゴロ。お盆の終わりを告げているようです。

 お盆の季節になると、昔、勤め先のお寺で出会ったお婆ちゃんのことを思い出します。

 そのお婆ちゃんとはご主人の一周忌を縁として出会いました。

 お勤めを終えた私に、「お坊さん、私は主人を亡くして寂しくて、もう生きる元気がありません。早くお迎えに来てほしいです」と、わりと元気そうにおっしゃいます。でも心の中は本当にそうなのでしょう。

 私は、「お婆ちゃん、お寂しいかもしれませんが、その時が来れば、必ず阿弥陀さまの方からお迎えに来てくださいます。だからそれまで元気を出して、楽しく過ごしましょうよ」と、励ます思いでお声かけをしました。

 それからまたしばらくして、お婆ちゃんのご自宅に行くご縁があり、たまたま奥のお部屋が少し見えました。

 するとそのお部屋には、最近求めたような最新式の足踏み健康器具や健康食品、漢方薬などの箱がたくさん並んでいました。

 それを見た私は、安心とともに、少しおかしくなりました。「もう生きる元気がない」「早くお迎えに来てほしい」と本当に思っているのであれば、足踏み健康器具や健康食品、お薬は必要ないはずです。でも健康器具を使用されたり、お薬を飲んでおられるのであれば、元気でありたい。病気にはなりたくないという思いがあるからでしょう。

 あらためて私はお婆ちゃんに言いました。

 「お婆ちゃん、阿弥陀さまのお姿は立っておられるでしょう。しかも横から見ると前かがみになっておられるのですよ。あれは、いつでも、どこでも、どのような時でも、阿弥陀さまの方から私たちを救おうとはたらき通し、願い通しのお姿なんですよ。だから早くお迎えになんて言わないで、阿弥陀さまにお任せしておけば大丈夫ですよ」

 お婆ちゃんは、にこやかに笑っておられました。

8月16日~早くお迎えに来て!2022年08月16日【410】

8月1日~その姿を思い浮かべながら…

 「夜の秋」とは夏の季語。夏の夜に、ふと秋のような涼しさを感じる時を言います。

 さて、今年もお盆が近づいてきましたが、この頃になると全国からお寺に数通の現金書留が届きます。

 封を開けると、中にはお手紙とお布施が入っています。鹿児島市のSさんからは、「移動にバスを利用しなければならないので、お参りができませんのでお盆のお勤めをしてください」と添えられています。

 大阪のBさんからは、「帰省しようと思っていたのですが、新型コロナの感染拡大のために帰省できなくなりました。お盆に仏さまにお供えしてください」と添えられています。

 宮崎のTさんからは、高齢のためなかなか鹿児島まで帰ることができませんので…」と、交通の便や新型コロナ、高齢など、皆それぞれに故郷に帰省できない理由が書かれていました。

 この他にもそれぞれお便りが添えられているのですが、私はその一通一通を拝見しながら、心から有り難く思います。

 なぜなら、そこにはご先祖を思い、故郷のお寺を思い、感謝の思いでお供えしてくださる心が表れているからです。

 ただご先祖を思うだけなら、お経をお勤めしてもらうのであれば、お住まいの近くのお寺に足を運べば事は済みます。

 しかし、お手紙を書いて、お布施を包んで、故郷のお寺にわざわざ郵送してくださることを私は大変嬉しく思いますし、きっと仏さまを敬うお心やご先祖への感謝の思い、故郷のお寺を懐かしく思ってくださるお心が、この行為に表れているのでありましょう。

 Sさんも、Bさんも、Tさんもその他の方々も、帰省できなくとも、それぞれのお家のお仏壇で仏さまにて手を合わせくださっていることでありましょう。

 私はそのお姿を思い浮かべながら、お念仏とともに仏さまに感謝のお勤めをいたします。有り難いお盆であります。

8月1日~その姿を思い浮かべながら…2022年08月03日【409】

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