こころの電話

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9月16日~幼い子どもは伸び伸びと

 お彼岸が近づき、朝夕は次第に涼しくなりました。

 さて、この度、西本願寺の第二十五代目のご門主である大谷光淳様が、初めて著書を出版されました。

 『ありのままに、ひたむきに ~不安な今を生きる~』という本で、PHP研究所から発行されています。

 日常生活の中で、心の不安や社会の矛盾に振り回され、様々な悩みをかかえて生きていかねばならない私たち一人ひとりが、ひたむきに精いっぱい生きていくことのできるヒントが、お釈迦さまや親鸞聖人の教えを拠り所に、とてもわかりやすくやさしく説かれています。

 その中で、弁護士で元大阪市助役の大平光代さんとの対談があり、現代の親子の関係についてお話しされており、大平さんは、今の時代の親は、「子どもを静かにさせよう、静かにさせよう」という意識がはたらいて、子どもを抑圧している現状があるのではとおっしゃいます。

 その原因には、日本の狭い住宅事情や社会自体にゆとりがなくなってきている点が考えられますが、そのような環境の中で、どうしても「静かにさせなければ」、「教育しなければ」という、「子どもを上から押さえつけないといけない」という意識が強くはたらいてしまうのではないかとお二人は話しておられます。

 この対談を読ませていただき、なるほど幼稚園やこども園でたくさんの子どもたちをお預かりする私自身も、知らず知らずのうちに同じような姿になっているのではないかと反省させられました。

 元来幼い子どもは自由奔放、泣きたいときは泣き、暴れたいときは思いきり暴れるものです。

ともすると静かにしている子がよい子、大人の言うことをすぐに聞くがよい子という、大人の一方的な価値観にとらわれているのではないかと。
 
幼い子どもが伸び伸びと精いっぱい動くことのできる環境を大切にしましょう。幼い子どもが自分の思いを存分に表現し発散できる環境を、社会に、家庭にたくさん作りましょう。

9月16日~幼い子どもは伸び伸びと2016年09月16日【269】

9月1日~どれほど涙を流しても…。

 台風十号は、岩手県と北海道を中心に甚大な被害をもたらしました。被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

 さて、ブラジル・リオで開催されたオリンピックは、先月二十一日で幕を閉じました。

 世界各国から集まった選手たちの活躍は大変素晴らしいものでしたが、逆に、練習の成果を十分発揮できずに、メダルに手が届かなかった選手の涙も大変印象的でした。

 今月七日からは、いよいよパラリンピックが開催されますが、いつもこの大会で感動を与えてくれるのは、競技を終えた後の選手たちの表情です。

 元来オリンピックは世界レベルでの勝負を決めるものですから、勝者は満面の笑みと喜びの涙を流し、敗者は拳を握りしめ悔し涙を流すものです。

 ところがパラリンピックでは、同じ世界レベルでの戦いではありながら、勝敗よりも、競技を最後まで精いっぱいやり遂げた選手たちの表情が、見る者に感動を与えます。

 このパラリンピックを提唱したのは、イギリスのルードヴィヒ・グッドマン博士という人で、彼は障害を持った人に対し、「失ったものを数えるな、残されたものを最大限に活かせ」と問いかけました。

 どれほど涙を流しても悔やんでみても失ったものは帰ってはこない。それよりも残されたものに最大限の価値を見出そうではないか、ということでありましょう。

 もしも、私自身が障害を持つ身になったとき、失われたものへの執着心を離れ、真の希望と未来を持つことができるか自信はありません。

 しかし、これまで多くの障害者の方々がこの言葉に出会い、私には想像もつかないほどの苦しみや悲しみを乗り越えて、自らの真に生きる場を創り出されたことは紛れもない事実であります。

 この度も、その素晴らしい姿に学ばせていただきたいと思います

9月1日~どれほど涙を流しても…。2016年08月31日【268】

8月16日~自分のこととして…

 スポーツの祭典、リオのオリンピックはいよいよ終盤です。

 さて、暑いこの季節、お寺で紹介されるお話に芥川龍之介の『蜘蛛の糸』がありますが、私があるお寺の親子の集いでこれをお話ししたときのことです。

 大泥棒のカンダタは生前の罪で地獄に堕ちて、煮えたぎる釜の中で喘いでいます。

 その様子をご覧になったお釈迦さまは、カンダタが生前、一匹の蜘蛛を踏みつぶさなかったことを思い出されて、一度だけ地獄から助かるチャンスを与えようと一本の蜘蛛の糸をたらされました。

 それをつかんだカンダタは助かろうとよじ登ります。しばらくして下を見るとなんと、地獄の亡者が次から次にと蜘蛛の糸を上ってくるではありませんか。

 細い糸が切れてしまうと思ったカンダタは、「これは俺のものだ。お前たちは上ってくるな」と下に向かって叫んだとたんに糸は切れて、カンダタもろとも皆再び地獄の釜に落ちていったというお話です。

 このお話をした後、数名の親子の話し声が聞こえてきました。

 あるお母さんは、「正人君、お坊さんが言ったのはあなたのことよ。あなたすぐ虫を殺しちうじゃない」と子どもに向かって言われました。別のお母さんは、「由美ちゃん、あのカンダタはあなたみたいね。あなたはおもちゃを独り占めして、妹たちや弟たちに貸してあげないでしょ。あんなことしてたら、お坊さんが言ったみたいに地獄に落ちちゃうわよ」と言われました。

 その話し声を聞きながら私は、「お母さん、お宅のお子さんのことかもしれませんが、お母さんあなた自身の姿はどうですか」と心の中で問いました。

 お母さん、家庭の中で、つい害虫と決めつけて小さな虫たちをむやみに殺していないですか。日常生活の中で、つい自分さえよければいいという心にとらわれることはないですか。

 『蜘蛛の糸』のお話もお寺のご法話も、自分のこととして聞かせていただかなければ意味はありません。難しいことです。

8月16日~自分のこととして…2016年08月18日【267】

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