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3月1日~扇動に惑わされることなく…
雲雀は春の空を楽しむ鳥。「楽天」や「スカイラーク」という異称も頷けます。
さて、突然学校が長期休校となるなど、新型コロナウイルスの感染拡大が全国的に心配されていますが、一方で先般、自分の身を危険にさらしながらも新型コロナウイルスに対応した医師や看護師らが、ばい菌扱いをするいじめを受けたり、職場の上司から医療活動に参加したことに対する謝罪を求められたりして、悲鳴に近い悲しい思いをしているとの報道がありました。
また身近なところでも、クルーズ船に乗船していた人がどこどこに住んでいるとか、どこどこで感染者が見つかったとか、様々な噂を耳にします。
このような話に触れる度に、昔、水俣市でお会いした水俣病の語り部の故杉本栄子さんのお話を思い出します。
杉本さんは水俣の漁師の娘として生まれ育ちましたが、中学生になったある日、杉本さんのお母さんの体が突然震えはじめ病院に運ばれますが、そこは既に神経を冒された人々が狂騒する地獄の光景だったそうです。
当初、風土病と思われた水俣病は、多くの差別と偏見を生み、村には造言飛語が広がり、杉本さんは筆舌し難い差別の過酷な日々を送ります。
杉本さんは、水俣病の厳しく辛い体験を通して、「人間、知ったかぶりをすることはいかん」。「人間、嘘を言うことはいかん」とおっしゃいました。
当時、水俣病の原因も実態もよく知らないのに、知ったかぶりのいい加減で曖昧な知識をひけらかしたり、町中に広がった造言や嘘は、当時病で苦しむ人だけでなく、水俣の町中を混乱に陥れ、多くの人々を苦しめ辛い思いをさせたそうです。
ワイドショーなどでは、いかにも得体の知れないモノが背後から襲ってくるようなおどろおどろしい音楽を流し、人々の不安を煽ります。
一人ひとりが不確定な情報や扇動に惑わされることのなく、言動や行動を慎み、冷静な対応をすることを、杉本さんが私たちに諭しておられます。
3月1日~扇動に惑わされることなく… | 2020年03月03日【352】
2月1日~そうなったときはそうなったとき
「一月は一気に過ぎる」と言われますが、本当にあっという間に過ぎて、テレホン法話の変更を失念していました。誠にすみません。
インフルエンザに加えて、新型コロナウィルスの感染が心配されています。過度な心配をせず、こまめな手洗いうがい、アルコール消毒に心がけましょう。
さて先日、癌が再発し再び入院することになった知人のお見舞いに行きました。
病院の待合室で待っていましたら、知人は「お見舞いなんかよかったのに」と言いながら、手をふりながらが病室から出てこられました。
ステージ四で抗がん剤治療が始まったばかりだそうで、私が「どうかお体を大事にして下さいね」と言うと、知人は「お医者さんからもそう深刻にならなくていいから、こつこつと治療をしていきましょうと言われました。私は大丈夫ですよ」と笑顔で話されました。
そして、「今はそう体にも大きな影響を感じていないので心配していませんが、体が深刻な状況になると、人はだんだん死というものを意識していくんでしょうね。でも今は大丈夫です。そうなったときはそうなったときです」と、知人は今現在の心境を素直に話すと同時に、お見舞いに来た私に心配かけまいと笑顔で話されました。
お話を伺いながら、どうにか治療が上手くいくようにと願わずにはおれませんでした。と同時に、その言葉の端々から、今日一日を精いっぱい生きることの大切さをあらためて教えられたような気がしました。
今日という字に、感じる、会うと書いて「今日感会」、今日という字に臨終と書いて「今日臨終」。「今日感会 今日臨終」。これは名優・緒形拳さんが生前、中国のお寺に行ったときに知った言葉だそうです。
「厳しい無常の中にあるこの命だからこそ、今日一日を大切に、一つ一つの出会いを大切に生きよう」という意味です。
お見舞いに行きながら、逆に大切なことを教えていただきました。
2月1日~そうなったときはそうなったとき | 2020年02月05日【351】
1月16日~もう一度、苦境を乗り越えて…
真冬の明け方、ぴんと張り詰めた空気に身も心も引き締まります。
今月十五日の夕方、遠征先のマレーシアで交通事故に巻き込まれたバドミントンで世界ランキング一位の桃田賢斗選手が日本に帰国しました。
東京五輪で金メダル最有力候補の日本人選手なだけに、このたびの事故は、本人のショックは相当なものだと思います。
桃田選手は、二〇一六年四月に違法賭博問題が発覚し、出場確実だったリオデジャネイロ五輪の出場資格を失い、無期限の謹慎処分を経て二〇一七年五月に実戦復帰しました。
そして翌一八年には世界選手権で初優勝。様々な苦境からはい上ったことで有名ですが、先般テレビの番組に出演。四年前の謹慎期間についてもお話をしていました。
当時は、「周りの人への感謝がすごく欠けていた。選手として環境を与えてもらえるのが当たり前で、自分のことしか考えられていない心の弱さがあった」。
また、謹慎中は自らの所属企業の業務も経験して、「NTT東日本がどういう仕事をしているのかも知らなかった。その姿勢が変わったのが一番大きい部分」と述べ、自分以外の多くの社員のお陰があって、自分が代表して試合に出られていたことに気づかされたというようなお話をしていました。
人間は誰しも間違いを犯してしまうことがあります。しかし、その厳しく辛い境遇になって初めて大切なものに気づかされることがあります。
悔恨と慚愧の日々の中で選手として、人間として大切なものを学び、苦境を乗り越えて再び頂点に帰りついた桃田選手の姿は、誰もが賞賛するところであります。
どうかその経験と強い精神力でこのたびの災禍を乗り越えて、晴れの大舞台で活躍してくださることを念じつつ、静かに応援したいと思います。
1月16日~もう一度、苦境を乗り越えて… | 2020年01月16日【350】