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6月1日~本堂の逆さに彫ってある花は…

 南の夜空に白く輝く真珠星が見える季節です。乙女座の一等星・スピカと言います。

 さて、浄土真宗を開かれた親鸞聖人は、大きなお寺の立派な高僧として過ごされたのではなく、どれほど頑張ってみても、自らの力では完全な悟りを得ることができない私たちが、阿弥陀仏の本願力によって皆、平等に救われていくことをお説きくださいました。

 先日読んだ本多昭人先生の『ふたたび出会う世界があるから』(本願寺出版社)という本の中に、本多先生と先生のお寺を訪れたあるご婦人のお話がありました。

 そのご婦人は、本堂の美しい花の彫刻が施してある欄間を指して、自分の所属するお寺にも、本多先生のお寺にも、逆さに彫ってある花があることを話されたそうです。

 お浄土の美しい様子を表現したお寺の欄間であれば、皆正面を向いて、きれいで立派に咲く花ばかりでいいはずです。ところが確かに、その中に逆さに裏を向けて咲く花があるのです。

 その逆さ向きの花は、何事にも完全なものはないということを表しているそうです。しかし、不完全でも、不出来でも、未熟でも、阿弥陀さまのご本願は必ず平等にお救いくださることを、その逆さ向きの花は表しているそうです。

 本多先生も初めて知ったと書いておられますが、私もこれまで知りませんでした。

 しかし、そのことを知ってから毎朝、本堂でお勤めしますと、欄間の見方や味わい方が変わってきました。

 自分自身はいつもあの凜と美しく正面を向いて咲く花だろうか。縁があれば、怒りや腹立ち、妬みや嫉みが心に湧いて、すねて裏ばかりみせている花の方ではなかろうか。そう思ったときに、そのような私を見捨てないと誓われた阿弥陀さまのご本願の有り難さが心に染みてくる気がしました。

 どうぞ、今度お寺にお参りになった時に、ぜひ欄間をゆっくり見て下さい。見方、味わい方はあなたの自由です。

6月1日~本堂の逆さに彫ってある花は…2020年06月01日【358】

5月16日~地獄・極楽はどこに…

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言は、九州全域解除となりましたが、引き続き一人ひとりが衛生管理に努めることが大切です。  

 さて、昔から仏教のお話には、よく地獄と極楽という言葉が出てきますが、地獄と極楽はいったいどこにあるのでしょうか。

 これは江戸時代中期のお話です。ある日、臨済宗の高僧・白隠禅師のところに、一人の武士が訪ねてきて、「地獄や極楽はどこにあるのか」とたずねたそうです。

 その問に対し白隠禅師は、「おまえさんは武士であろう。武士というものは、常に生死を超えているものだ。その武士が地獄・極楽をわしに聞きに来たということは、さては死ぬことが怖くなったのだな。なんとも情けない武士だ」と、散々罵倒したそうです。

 武士はじっと我慢して聞いていましたが、白隠禅師の侮辱の言葉があまりにも続くのでついに怒りが頂点まで達し、「いかに高名な白隠和尚といえども、わしに放ちたる侮辱の言葉は許すわけにはいかぬ。覚悟しろ」と、刀を抜いて禅師に斬りかかりました。

 すると、白隠禅師はそれをするりと交わして、すかさず言ったそうです。

 「それ、そこが地獄だぞ」

 その言葉を聞いて、武士ははっとします。そして、刀を捨て禅師の前に伏して、「白隠和尚、申し訳ございません。有り難うございます」とお礼を言いました。 「おお、わしが伝えたいことがわかってくれたか。それ、そこが極楽じゃ」

 白隠禅師は、微笑みながらそう言われたそうです。

 仏教では、自らの行いによって死後に行く世界を地獄、極楽と説きますが、それと同時に、私たち一人ひとりの心の有り様を常に問うのも仏教です。

 このお話は、怒りや腹立ち、妬みや嫉みが自分の心の中に起きたとき、それを抑えることはとても難しいことですが、その瞬間に、自分の足は地獄への道を進んでいることに気づくことの大切さを伝えています。
(仏教法話大辞典より)

5月16日~地獄・極楽はどこに…2020年05月18日【357】

5月1日~多くの人々の支えの中で…

 新緑の間を渡ってくる風を薫風と言いますが、この香りは殺菌作用や人体を活性化するはたらきがあるそうで、新型コロナウイルスも吹き飛ばして欲しいものです。

 さて、この度は、まず一つの言葉を紹介します。「靴の底 すり減って 傷だらけになって 私の歩みを 支えてくれている」.

 これは、癌を抱えながら苦しみ、あらがい、悩み、そして往生なさる最後までお念仏とともに尊く立派に生き抜かれた本多昭人先生の『ふたたび出会う世界があるから』という本に紹介されていた言葉です。

 本多先生は、この言葉を目にしたとき、「病んだ私を気遣い、激励し、そっと背中を押してくれている周囲の人々の存在に目が向きました。そして、私はその人々の支えの中で生きていることを再認識したのです」とおっしゃっています。

 本多先生のおっしゃると通り、私たちは日々何事もアタリマエのように生活していますが、私の周囲にはその一日を支えてくれているたくさんの人々、いのちがあることに気づかされる言葉です。

 新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言のために、観光業、飲食店、宿泊施設、交通機関など、お仕事をしたくてもできない方々がたくさんおられます。また逆に、この困難な中にありながらも、日々医療に従事してくださっている方々、スーパーで荷下ろしや販売をしてくださっている方々、警察関係や福祉関係の方々など、多くおられます。

 普段は皆忙しくて、なかなか思いが至りませんが、一度この度ののようなことがあると、私の一日を支えてくださり、汗水流してこの社会を支えてくださっている方々に、あらためて気づかされます。

 そして特に、新型コロナウイルス感染者の治療のために、日夜努めてくださっている医療関係者には敬意と感謝を申し上げます。

 「靴の底 すり減って 傷だらけになって 私の歩みを 支えてくれている」。ただ今、深く味わわれる言葉です。

5月1日~多くの人々の支えの中で…2020年05月01日【356】

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