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9月1日~自分を創る責任者

 九月に入り、いつの間にかセミの声が虫の声に変わりました。

 さて、最近お葬儀にお参りに行くときに、そのお亡くなりになったお方が過ごされた日数を数えていくことにしています。

 通常そのお方が生きた年数を享年としますが、日数で示すと人生に対する味わいが、少しまた違うような気がするからです。

 例えば、誕生日とご命日がたまたま同じ日になったと仮定して、享年七十歳の方は25,202日。享年八十歳の方は28,854日。享年九十歳の方は32,507日となります。

 今七十歳の方が、私はあと十年くらいは生きるだろうと思っていても、日数で見るとあと3,652日しかありません。

 一年365日はあっという間に過ぎてしまいますから、それが十回過ぎたらお別れです。

 人生時計という見方もあります。十二時間計を、人生が八十年と仮定して、五十歳の人は37分30秒、六十歳は45分、七十歳は52分30秒となります。

 こういう私も還暦はとうに過ぎましたので、残りはあと十数分しかありませんし、さらに大切なことは、命の問題はいつどのようなときに、どのような終焉が来るかわからないということです。

 お寺の住職で、教育者としても大変高名だった東井義雄先生は、「自分は自分の主人公、世界でただひとりの自分を創っていく責任者」と言われました。

 人生は一日一日の積み重ねです。自分を創っていく責任者としてあと残された一日一日ををどのように過ごしましょうか。そして、いつか近い将来に来る自分の終焉にそなえて、自分はどこに向かうか、はっきりと答えることができるでしょうか。

 日ごろの忙しい手を少し休めて、そのことを見つめるのがお彼岸で大切ことです。どんなに年を取っても年に二回、この行事が必ずやってくるのはとても有り難いことです。

9月1日~自分を創る責任者2023年09月02日【435】

8月16日~どっちが大切なの?

 今年もお盆のお参りが終わりました。

 さて先日、こども園で、年長児の男の子が先生に質問したそうです。

 「先生はいつも、『先生のお話をよく聞くことが大切ですよ』と言ったり、『みんなのいのちは大切ですよ』と僕たちに話したりするけど、お話を聞くことと、いのちと、どっちが大切なの」

 先生のお話をよく聞いている子どもでしょう。いい質問です。

 その質問に対して先生は、お釈迦さまの前世の物語から一話、お話ししたそうです。

 むかし、お釈迦さまは、サルの王様として、たくさんのサルたちと大きな森の中で暮らしていました。森の中には、恐ろしい鬼が住んでいたので、常々十分気をつけるようにと、サルたちに話をしていました。

 ある日のこと、サルたちは、森の奥できれいな池を見つけて、その水を飲もうとしましたが、王様の教えを思い出して、王様が来るのを待っていました。

 池に到着した王様は、その池を見回して、池に降りていく足跡はたくさんあるのに、池から上がってくる足跡が一つもないのに気がつき、この池に入ったら、出てこられないと思い、サルたちに水を飲ませませんでした。

 すると、池の中から恐ろしい姿の鬼が出てきて、「早く池に入って水を飲め」と誘いました。サルを捕まえて食べてしまうつもりです。

 サルの王様は、池の淵に生えている葦をぬいて、その先を水面に入れて、水を飲むことをサルたちに教えました。

 サルたちは王様の教えをよく聞いて、その通りにして水を飲むことができました。

 お陰で一匹も鬼につかまることはありませんでした。

 こども園の先生は、このお話をして、「皆さん一人ひとりのいのちは大切です」、そして、「先生のお話を聞くことも大切ですよ」と、あらためてお話ししたそうです。

8月16日~どっちが大切なの?2023年08月16日【434】

8月1日~あなたたちが今日野球ができるのは…

 連日続く猛暑、急な白雨が地面のほとぼりを冷ましてくれるようです。

 さて先日、ネットニュースで、元メジャーリーガーの高橋尚成氏さんが大リーグ時代に大変立腹した出来事が紹介されていました。

 それはある日、練習の合間に、高橋さんがグローブを大切にグラウンドに立てて置いておくと、ちょうどアメリカンフットボールのシーズンだったこともあり、米国人選手がそのグローブをボールに見立ててスタンドまで蹴り飛ばしたそうです。

 ネットには、「この野郎ってブチ切れた。日本人は道具を大切にするんだって説教したら最後は反省して謝ってきた」と書いてあり、高橋さんは「米国人は大量生産の国なので、何でも常にもらえると思っている」と話し、同じ大リーグで活躍したイチローさんにも同様なことがあったと話しておられます。

 このお話には、日本人の多くの人が同じ思いを持つのではと思いますし、その背景には、仏教の縁起の教えがあるのではと思います。

 縁起の教えとは、「すべてのものは、それ一つで存在しているものは何もなく、はかることのできない多くの因縁によって存在している」という仏教の基本思想です。

 グローブ一つにしても、元はどこかで生きていた牛でしょう。その牛が命を落として、皮職人の手によって皮となり、その皮をプロの職人がグローブに仕立てて高橋さんのもとに届けられたものです。バットも、ユニホームも、スパイクも、すべて同じです。

 高橋さんは「僕らは、野球を教わったときからグローブ、バットを大事にしなさいって教えられた」とおっしゃっていますが、その指導者の言葉の奥には、「あなたたちが今日野球ができるのは、これらの道具を買ってくださった親をはじめ、道具を作ってくださった有縁の多くの方々のお陰で野球ができることに、感謝の思いを忘れないように」という心がこめられていると思います。

 そのような環境で育った多くの日本人選手が、大リーグで活躍していることを、成績とはまた別の意味で、うれしく有り難く思うのです。

8月1日~あなたたちが今日野球ができるのは…2023年08月01日【433】

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