8月1日~あなたたちが今日野球ができるのは…
連日続く猛暑、急な白雨が地面のほとぼりを冷ましてくれるようです。
さて先日、ネットニュースで、元メジャーリーガーの高橋尚成氏さんが大リーグ時代に大変立腹した出来事が紹介されていました。
それはある日、練習の合間に、高橋さんがグローブを大切にグラウンドに立てて置いておくと、ちょうどアメリカンフットボールのシーズンだったこともあり、米国人選手がそのグローブをボールに見立ててスタンドまで蹴り飛ばしたそうです。
ネットには、「この野郎ってブチ切れた。日本人は道具を大切にするんだって説教したら最後は反省して謝ってきた」と書いてあり、高橋さんは「米国人は大量生産の国なので、何でも常にもらえると思っている」と話し、同じ大リーグで活躍したイチローさんにも同様なことがあったと話しておられます。
このお話には、日本人の多くの人が同じ思いを持つのではと思いますし、その背景には、仏教の縁起の教えがあるのではと思います。
縁起の教えとは、「すべてのものは、それ一つで存在しているものは何もなく、はかることのできない多くの因縁によって存在している」という仏教の基本思想です。
グローブ一つにしても、元はどこかで生きていた牛でしょう。その牛が命を落として、皮職人の手によって皮となり、その皮をプロの職人がグローブに仕立てて高橋さんのもとに届けられたものです。バットも、ユニホームも、スパイクも、すべて同じです。
高橋さんは「僕らは、野球を教わったときからグローブ、バットを大事にしなさいって教えられた」とおっしゃっていますが、その指導者の言葉の奥には、「あなたたちが今日野球ができるのは、これらの道具を買ってくださった親をはじめ、道具を作ってくださった有縁の多くの方々のお陰で野球ができることに、感謝の思いを忘れないように」という心がこめられていると思います。
そのような環境で育った多くの日本人選手が、大リーグで活躍していることを、成績とはまた別の意味で、うれしく有り難く思うのです。
2023年08月01日【433】