1月1日~おごらず、ひがまずの日暮らし
新年明けましておめでとうございます。
さて、一年の始まりに、今年こそ、いや今年も幸せな一年になるようにと、誓いを立てられた方もいらっしゃることでしょう。
中国の古い書物『淮南子(えなんじ)』に、人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま)という故事があります。
中国の国境近くの村に老人が住んでいました。
ある朝、老人が目を覚ますと大切な馬が小屋からいなくなっていました。古い時代のことですから馬は老人にとって貴重な財産です。しかし、どこを探しても馬は見当たりません。
それを聞いた村人は、気の毒がって老人を見舞に行きました。
ところが老人は、意外にもケロッとして、「わしは少しも力を落としてない。悲しくもない」と言いました。
数日するとなんと、逃げ出した馬が立派な雌馬を連れて帰ってきました。
それを伝え聞いた村人は驚いて、今度は、老人の所へお祝いにやってきました。
すると老人は少しも嬉しそうな顔をしないで、「何がめでたい。これが災いの種にならんとも限らん」と言いました。まったくへそ曲がりなじいさんです。
数年のうち、二頭の馬は子どもを生み、老人の家は次第に裕福になりました。それがある日、老人の息子が馬から落ちて、大けがをしてしまいました。
またまた村人たちはお見舞いに駆けつけましたが、老人は「何が気の毒にじゃ、これが幸せをつかむきっかけになるかもしれんのに」と言い、村人はあきれかえるばかりです。
それから一年後、隣の胡という国と戦争が始まり、村の若者は戦地に出向き、激しい戦の末にその多くは死んでしまいましたが、老人の息子は足が完治していなかったので、戦いを免れ生き残ったというのです。
村人たちは、感心しながら、以前の老人の不可解な言葉を思い返したのです。
すべては無常、災いも悲しむに当たらず、福も喜びぶ当たらず。おごらず、ひがまずの日暮らしがよいことを伝えています。
2016年01月02日【255】